グスタフ・マーラー Gustav Mahler (1860-1911)・作品覚書(15)リートと歌第2,3巻


リートと歌第2,3巻

リートと歌と題された3集よりなるマーラーのピアノ伴奏歌曲集は、内容上は、第1集と 第2,3集の2つに分かれる。第2,3集は出版の便宜上分けられてはいるものの、 いずれも「子供の魔法の角笛」に付曲した作品のみからなっており、しかも、それぞれが 独立の作品であるから、順序にしても第2,3集のいずれに帰属するかについても、 別段の意図はないことになる。第2,3集については出版も1892年に同時に行われており、 ひとまとめとして扱うのであれば、ピアノ伴奏版のみが存在する「魔法の子供の角笛」 歌曲群として9曲をひとまとめにするのが適当だろう。

マーラーは管弦楽法の大家ということになっていて、歌曲においても管弦楽伴奏であることが 特色として挙げられることが多い。そうした中で、このピアノ伴奏の9曲は、同じ「角笛」歌曲でも 管弦楽伴奏を持つ他の作品に比べて、注目される機会は決して高くはないというのが実情かも知れない。

そこで問題になるのは、マーラーの創作の中でこのピアノ伴奏歌曲が占める位置である。 なぜマーラーはこれらの曲に管弦楽伴奏をつけなかったのか。時期の問題というのはありえない。 先行する「さすらう若者の歌」の管弦楽伴奏版の成立過程ははっきりとしない部分があるようだが、 それでも1891年から1893年くらいのことと考えられていて、1888年から1890年くらいに作曲された と考えられているこの「角笛」の9曲だって、その気になれば「後から」管弦楽伴奏版を作ることは 可能だったはずなのだ。マーラーはこれらの9曲については管弦楽伴奏版を作る価値を認めなかったの だろうか。この後、マーラーはアルマへの「私信」の性格があると考えられる「美しさゆえに愛するなら」を 除いて、全ての歌曲について管弦楽伴奏版を作っていて、そういう意味ではこの9曲は寧ろ「例外」の 側に属するといっても良いのである。この点で興味深いのは「夏の交替」で、第3交響曲第3楽章に 素材を提供したにも関わらず、この歌曲自体は管弦楽伴奏版が作られることはなかったようだ。 (2008.10.7 この項続く)

形式の概略(長木「グスタフ・マーラー全作品解説事典」所収のもの)
悪い子たちをおとなしくさせるには前奏「快活に」13E
前半(第1,2節)419
間奏2022
後半(第3,4節)2338
後奏3941
緑の森を愉快な気分で歩いていったら第1節「夢見るように、総じて優しく」128D
第2節2957
第3節「少しより遅くして」5880G
第4節「テンポI」81108D
終わっては!終わっては!第1節「大胆な行進曲のテンポで」110Des
第2節1118B
第3節1928Des
第4節2940A
第5節4148Des
第6節「嘆くように(パロディを伴って)」4966B
第7節6779Des
たくましい想像力前奏「非常にゆったりと、ユーモラスな表現で」12B
第1節311
第2節1220
シュトラスブルクの城塁に立つと前奏「民謡の調子で(感傷なしに、非常にリズミカルに)」14fis
第1節516
第2節1726
第3節2738
第4節3961H-h
夏の歌い手交代前半「ユーモアを伴って」131b
後半3258B
後奏5967b
別れさせられ遠ざけられるのは第1節「快活に」145F-F/f
第2節4681f-F
もう会えない!第1節「憂鬱に」116c
第2節1726
第3節2740
第4節4151
第5節5268C-c
自惚れごころ前半「不機嫌な調子で」126F
後半2757


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(2008年2月作成)